気になる会社の採用ページに、直近3年度の新卒の採用者数と離職者数が載っていました。厚生労働省が出している離職率と比べようとしました。けれども、どの年の数字と並べればいいのか、そもそも並べてよいのかが分からず、手が止まっています。
この記事を読み終えると、国の離職の統計(新規学卒就職者の離職状況)が何を数えた数字かと、最新の公表の読み方が分かります。会社ごとの数字を書き写す手順と、国の数字と並べる前にそろえる三つのことも、手元に残ります。
この記事では、「離職率が高い業界や会社は避けたほうがいい」とは書きません。厚生労働省の集計は辞めた理由を問わずに数えていて、数字だけでは良し悪しを決められないからです。数字と制度は厚生労働省の資料で確かめて末尾の参考欄に出どころを載せ、例はすべて架空のものにしています。
この記事の結論
厚生労働省の離職状況(令和7年10月公表)では、令和4年3月卒の大卒の就職後3年以内の離職率は33.8%です。2026年10月9日に確かめた時点では、これが最新の公表です。
国の数字は、雇用保険の届けをもとに卒業年ごとに数え、辞めた理由は問いません。会社ごとの数字(若者雇用促進法の職場情報)は、事業年度ごとの企業全体の数字で、数え方が違います。
二つを並べる前に、何人のうちの何人か(母数)、いつからいつまでか(期間)、誰を数えたか(範囲)を書き写してそろえます。
厚生労働省の離職状況が数えているもの
厚生労働省は、学校を卒業して就職した人が、就職してから3年以内にどれだけ離職したかを公表しています。資料の名前は「新規学卒就職者の離職状況」で、卒業した年と学歴(中学・高校・短大等・大学)ごとに数字が並んでいます。この記事では、この資料を「離職状況」と呼びます。
数え方は、厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」のページに、集計の考え方として書かれています。もとになるのは、会社の事業所がハローワークに出した雇用保険の加入の届けです。生年月日や加入した日などから学歴ごとの新卒を推定して就職者とし、離職した日から離職者の数と率を出しています。
令和4年3月卒の大卒の数え方(集計の考え方から)
就職者:平成12年4月1日以前に生まれ、令和4年3月1日から6月30日までに、新卒として雇用保険に入った人です。
離職者:就職者のうち、令和4年3月1日から令和7年3月31日までに、届けを出した事業所を離職した人です。辞めた理由や、辞めたあとに働いているかどうかは問いません。
離職率:離職者の数を、就職者の数で割ったものです。
この場合の「就職後3年以内」は、卒業した年の3月1日から、3年後の3月31日までです。大学以外の学歴は、生年月日の区切りが違うだけで、同じ考え方で数えています。
最新の公表の数字と、表の読み方
2026年10月9日に確かめた時点で、最新の公表は令和7年10月24日の報道発表です。対象は令和4年3月に卒業した人で、それより新しい卒業年の3年以内の離職率は、まだ出ていません。
令和4年3月卒の大卒(離職状況、令和7年10月公表)
就職者は449,012人です。
就職後3年以内に離職した人は151,911人で、離職率は33.8%です。
内訳は、1年目が54,237人(12.1%)、2年目が53,245人(11.9%)です。3年目は44,429人(9.9%)でした。
3年以内の離職率は、1年目から3年目までに辞めた人を合わせた数字です。表の注記にあるとおり、率は小数第2位を四捨五入しているので、内訳の率を足しても合計と一致しないことがあります。
同じ表には、令和5年3月卒と令和6年3月卒の行もあります。注記によると、この二つの行は、令和7年6月の時点でつかんだ数字です。令和5年3月卒は2年目まで、令和6年3月卒は1年目までの離職しか入っていません。
令和7年10月公表の離職状況の表で、令和5年3月卒の大卒の欄にある21.8%は、2年目までの離職率です。令和4年3月卒の3年以内の離職率と並べると、期間の違う数字を比べることになります。
卒業年が一つ違えば、数字も違います。令和7年10月公表の離職状況の表で、令和3年3月卒の大卒の就職後3年以内の離職率は34.9%です。数字を書き写すときは、卒業年と公表の年月を同じ行に書きます。
事業所の規模別と産業別の表
厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」のページには、学歴ごとに、事業所の規模別と産業別の表とグラフが載っています。中学卒だけは、産業別のグラフが省かれています。産業別は、大分類と、製造業を中分類に分けたものです。
規模別の「事業所」は、ページの注記によると、ハローワークに雇用保険の適用事業所の届けを出している事業所のことです。会社に事業所がいくつかあれば、会社全体の人数と、事業所の人数は別の数です。会社の資料の人数と並べるときは、事業所の単位の表だと書き添えます。
産業の行の名前は、業界研究で使う業界の名前と同じとは限りません。表の行の名前のまま書き写し、自分の業界の地図のどこに当たるかは、業界研究のやり方の記事の手順で確かめます。
資料の名前と公表の年月を書く最初に
表を開いたら、資料の名前と、公表の年月を先に書きます。
学歴と卒業年を決める次に
自分の学歴の表を選び、3年目までの数字がそろっている卒業年の行を使います。
規模か産業の行を選ぶ必要なとき
応募先の事業所の規模か、産業の行を選び、行の名前のまま写します。
人数と率を、期間と一緒に写す最後に
就職者数、離職者数、離職率のうち載っているものを、1年目まで・2年目まで・3年目までのどれの数字かと一緒に写します。
会社ごとの数字(職場情報)が数えているもの
会社ごとの数字は、若者雇用促進法にもとづく職場情報で確かめます。厚生労働省の「職場情報の提供制度」のページでは、直近3事業年度の新卒採用者数と離職者数が、項目の一つに挙がっています。
数字が載っている場所
会社のホームページや説明会の資料、求人票に載っていることがあります。ハローワークの大卒等の求人票には、「募集・採用に関する情報」の欄があります。厚生労働省の若者雇用促進総合サイトでも、登録している会社の職場情報を検索できます。
載っていないときの求め方は、企業研究のやり方と就活の軸の決め方の記事にまとめています。この記事では、受け取った数字の読み方を書きます。
求めがあったときに会社に義務づけられているのは、三つの区分それぞれで、一つ以上の項目を出すことです。採用者数・離職者数は、募集・採用の区分にある項目の一つなので、同じ区分の別の項目だけが出てくることもあります。
事業主向けのリーフレットは、指針を引いています。項目を指定して求められたら、特段の事情がない限り、その項目を出すことが望ましいという内容です。欲しいのが採用者数と離職者数なら、項目の名前で伝えます。
誰を、いつまで数えた数字か
受け取った数字は、まず誰を数えたものかを確かめます。学生向けのリーフレットによると、提供されるのは企業全体の、雇用形態ごとの情報です。正社員の募集なら正社員の情報で、海外の支店などで働く人は除かれます。
採用区分や事業所ごとの数字は、追加の情報として出すよう会社に勧められているものです。グループでまとめて採用する場合は、配属の可能性がある会社ごとの情報を出すよう、事業主向けのリーフレットは求めています。
期間は、会社の事業年度で区切られています。ハローワークの求人申込書(大卒等)の書き方の資料では、直近に終わった事業年度を含む3年度分を書きます。採用者数には、新卒と同じ採用枠で採った既卒者なども含みます。
同じ資料は、離職者数を、各年度に採用した人のうち、その3年度の中で辞めた人の数としています。新しい年度に採用した人ほど、入ってから数えた期間が短い数字です。
職業紹介事業者などには、厚生労働省が「青少年雇用情報シート」という様式を勧めています。このシートでは、採用者数と離職者数が、前年度・2年度前・3年度前の欄に分かれています。表題には正社員と正社員以外のどちらの情報かを示すところがあり、記入日の欄もあります。
国の数字と並べる前にそろえる三つのこと
国の数字と会社の数字は、数え方が違います。並べる前に、母数・期間・範囲の三つを書き写して、どこが違うかを確かめます。
母数:何人のうちの何人か一つ目
率だけでなく、就職者数(採用者数)と離職者数の実数を写します。採用が数人の年度は、一人の離職で率が大きく動きます。
期間:いつからいつまでか二つ目
国の数字は卒業年ごとの就職後3年以内で、会社の数字は事業年度ごとです。会社の数字は新しい年度ほど短い期間の数字です。国の表の新しい卒業年の行も、2年目まで・1年目までの数字です。
範囲:誰を数えたか三つ目
国の数字は雇用保険の届けをもとに、届けを出した事業所での離職を数え、辞めた理由は問いません。会社の数字は企業全体の雇用形態ごとの数字で、既卒者などを含むことがあります。
そろえていない書き写し方の例(架空)
この会社の離職率はXX%で、国の数字より低いです。
そろえた書き写し方の例(架空)
会社の数字は企業全体の正社員の数字で、3年度前に採用した〇人のうち〇人が離職しています(会社の資料、記入日は〇年〇月)。国の数字は離職状況(令和7年10月公表)の令和4年3月卒の大卒で、就職後3年以内の離職率は33.8%です。国の数字は、雇用保険の届けをもとに数えたものです。
→ そろえた例は、母数・期間・範囲と、資料の名前と時点が、数字の横に書いてあります。そろえていない例は、数え方の違う二つの率を、そのまま比べています。
数字を並べる前に確かめること0 / 5 完了
数字を読んだあとに確かめること
離職の数字からは、辞めた理由までは分かりません。数字を読んで気になったことは、自分の働く条件の軸と照らし、確かめたいことを質問の形にします。条件の軸の作り方は、就活の軸の決め方の記事にまとめています。
面接対策150問のQ130(長く働き続けるための条件)で、自分に必要な条件を話す練習ができます。数字を読んで残った不安は、Q134(選考を通じて不安に感じている点)で、確かめたい事実の質問に変える練習ができます。
職場情報を求めても出てこないときや、頼んだ項目と違う情報が出てきたときは、最寄りのハローワークに相談できます。学生向けのリーフレットは、内容が不正確ではないかと思うときも、相談の例に挙げています。
書き写した数字は、応募する会社が変わっても同じ表に並べてください。資料の名前と時点が横にあれば、厚生労働省の新しい公表が出たときに、どの数字を差し替えればいいかがすぐに分かります。
よくある質問
いちばん新しい「就職後3年以内の離職率」は、何年3月卒の数字ですか?
厚生労働省の離職状況(令和7年10月公表)では、令和4年3月卒の大卒の就職後3年以内の離職率が33.8%です。2026年10月9日に確かめた時点で、これが最新の公表でした。新しい卒業年の分が出ていないかは、厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」のページで確かめます。
会社の離職率が国の数字より低ければ、安心してよいですか?
この記事では、そうした判断は書きません。国の数字と会社の数字は、期間の区切りも、数える単位も違うからです。並べる前に、母数・期間・範囲を書き写してそろえます。
職場情報を求めると、選考で不利になりませんか?
学生向けのリーフレットは、情報を求めた人にだけ説明会などの情報を出さないことを、不利益な取扱いの典型の例に挙げています。不採用になったことだけでは不利益な取扱いとはいえない、とも書かれています。困ったときは、最寄りのハローワークに相談できます。
業界ごとの離職率は、どこで見られますか?
厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」のページに、学歴ごとの産業別の表があります。表の産業の名前は、業界研究で使う業界の名前と同じとは限らないので、行の名前のまま書き写します。この記事では、業界の良し悪しは書きません。
参考にした公的資料
制度・日程・法律についての説明は、次の公的機関のページで確かめたものだけを書いています。確かめた日も添えています。
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」(報道発表、令和7年10月24日)
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省「新規学卒者の離職状況」
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」(表、PDF)
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省「職場情報の提供制度」
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「就労実態等に関する職場情報を企業に求めることができます!(学生向け)」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「就労実態等に関する職場情報を応募者に提供する制度について(事業主・紹介事業者向け)」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省「求人申込書(大卒等)の書き方のポイント」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省「求人票(大卒等)の見方のポイント」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省「青少年雇用情報シート」(Excel)
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省「若者雇用促進総合サイト」
https://wakamono-koyou-sokushin.mhlw.go.jp/
会社に職場情報を求める手順と、働く条件の軸の作り方の記事を並べておきます。
【完全無料】
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