エントリーシートの志望理由の欄を前にして、何も書けずにいます。会社のウェブサイトを開いても、並んでいるのは理念や社員の言葉で、それを写すと誰にでも書ける文になってしまう。かといって、自分の言葉で書こうとしても、何を書けばいいのかが浮かびません。
この記事を読み終えると、志望理由を書くために調べることの一覧と、調べた内容を志望理由の形にする手順が手元に残ります。必要なのは、志望している業界と会社の名前を書いた紙一枚です。業界について調べる作業と、会社について調べる作業を分けて進めます。
先に、この記事が採らない立場を書いておきます。そのまま使える志望理由の例文は載せません。志望理由は、調べたことと自分の経験をつなげて書くもので、他人の文を写しても答えにならないからです。
この記事の結論
志望理由が浮かばないときは、熱意より先に、調べた材料が足りていないかを確かめます。
業界については、担っている役割、近い業界との違い、抱えている課題を調べます。
会社については、事業の仕組み、同じ業界の他社との違い、説明会や社員から直接聞いたことを集めます。
志望理由が浮かばないときに足りていないもの
志望理由を聞く質問は、大きく二つに分かれます。なぜその業界なのかと、なぜその業界の中でもこの会社なのか、です。このサイトの面接対策150問でも、業界志望理由と企業志望理由を別のテーマとして扱っています。
業界志望理由のテーマでは、この質問の意図を、業界の構造を理解したうえで選んでいるかを見るもの、と整理しています。他の業界と比べた形跡があるかが、いちばんの分かれ目だとしています。企業志望理由のテーマでは、同じ業界の他社ではなく、その会社を選ぶ理由があるかを見るもの、と整理しています。
どちらも、聞かれているのは気持ちの強さではなく、選んだ理由の中身です。そこでこの記事では、志望理由が浮かばないときは、まず材料がそろっているかを確かめる、という立場で手順を組みます。比べたり選んだりするための材料を、何から集めるかを順に挙げます。
この記事で言う「一次情報」
会社の人や説明会から自分で直接聞いたこと、自分で確かめたことを指します。ウェブサイトや資料に書いてあることは、誰でも同じものを読めるので、ここでは一次情報と分けて扱います。
業界について調べること
業界の志望理由は、その業界が社会の中で何を担っているかが分かると書き始められます。ここでは、業界について調べることを三つに分けます。
業界が担っている役割
一つ目は、その業界が誰に何を届けているかです。業界の志望理由を聞く問い(Q101)では、話の順番を整理しています。
自分のきっかけになった経験、業界が担う役割、自分が貢献できる形、の順です。業界の一般論だけで終わらせないことも書かれています。
悪い例は、人と関わる仕事がしたいので志望している、と答える形です。人と関わる仕事はどの業界にもあるので、その業界を選んだ理由になりません。業界の役割を調べ、その役割と自分の経験がどこで重なるかを探します。
近い業界との違い
二つ目は、近い業界と比べたときの違いです。他の業界と比べた理由を聞く問い(Q102)では、比べる軸をはっきりさせるよう整理しています。検討した業界を業種の名前で挙げ、選ばなかった理由まで話します。
悪い例は、他の業界も見たが、やはりこの業界がいちばん合っていると感じた、と答える形です。何と比べて、どこが違ったのかが無いので、比べた形跡が伝わりません。比べる軸を一つ決め、その軸で近い業界を一つか二つ並べて、違いを書き出します。
同じ業界の中にも、仕事の領域の違いがあります。業界の中のどの領域を志望するかを聞く問い(Q104)では、領域ごとの違いを踏まえるよう整理しています。
そのうえで、選んだ領域と選ばなかった領域を述べます。業界を調べるときは、業界の中の分かれ方も一緒に見ておきます。
業界の課題とこれから
三つ目は、業界が抱えている課題です。業界の課題を聞く問い(Q103)では、業界の構造から課題を述べるよう整理しています。
良くない面にも触れ、自分の仮説として示します。悪い例として挙げているのは、人手不足や少子化のように、どの業界にも当てはまる話で終わる答えです。
業界のこれからを聞く問い(Q105)では、自分で集めた情報を根拠に予測するよう整理しています。そのうえで、自分がどこで価値を出すかまでつなげます。
想定される深掘りには、その予測の根拠になった資料は何か、という問いがあります。予測を話すなら、どの資料や話を見てそう考えたのかを言えるようにしておきます。
業界の課題は、業界を否定するために調べるものではありません。課題が分かると、その業界で自分が何をしたいかを具体的に言えるようになります。課題と自分のやりたいことがつながったところが、志望理由の芯になります。
会社について調べること
業界の志望理由が書けても、それだけでは、なぜその会社なのかには答えていません。ここでは、会社について調べることを三つに分けます。
事業の特徴
一つ目は、その会社の事業の特徴です。会社の志望理由を聞く問い(Q106)では、会社の事業の特徴を一次情報から述べるよう整理しています。
そこに、自分の経験とのつながりを示します。理念の引用に頼らないことも書かれています。
悪い例は、理念に共感した、人を大切にする社風に魅力を感じた、と答える形です。企業志望理由のテーマでは、会社のウェブサイトの言葉をなぞるだけの答えはすぐに見抜かれる、と整理しています。理念を読んだら、その理念が事業のどこにどう表れているかを調べます。
同じ業界の他社との違い
二つ目は、同じ業界の他社と比べたときの違いです。同業他社と比べた理由を聞く問い(Q107)では、比べた会社との違いを事業の仕組みで述べるよう整理しています。雰囲気や社員の印象だけにはしません。
悪い例は、業界でも大手で安定しており、社員が魅力的だった、と答える形です。規模や印象は、同じ業界の別の会社にも当てはまることがあります。仕事の分け方、顧客との関わり方、事業の組み立てのように、会社ごとに違いが出るところを比べます。
会社の課題を仮説で持つ
三つ目は、その会社の弱みや課題です。会社の課題を聞く問い(Q108)では、批判ではなく仮説として述べるよう整理しています。
根拠と、自分が関わるならどうするかまで添えます。悪い例は、特に弱みは無い、と答える形です。
会社の課題は、調べた事業の特徴の裏側から考えると見つけやすくなります。強みとして挙げられている仕組みが、どんな条件で弱くなりうるかを考えます。そのうえで、仮説が外れていたら考え直すつもりで話します。
説明会や社員から直接聞くこと
会社のウェブサイトや資料で分かることは、ほかの応募者も同じように読めます。会社の違いを自分の言葉で書くには、自分で直接聞いた情報が材料になります。企業志望理由のテーマでも、社員や先輩への訪問で得た一次情報を根拠に使うよう整理しています。
説明会や訪問で印象に残ったことを聞く問い(Q110)では、誰から聞いた何かを具体的に述べるよう整理しています。そこから自分が考えたことまで話します。
悪い例は、社員が親切で明るい雰囲気だった、と答える形です。雰囲気の感想は、聞いた内容がほかの会社と比べてどう違ったのかを含んでいません。
直接聞く機会があるときは、調べて分からなかったことを持っていきます。聞いた内容は、その場で誰から聞いたかと一緒に書き留めます。誰から聞いたかを言えれば、深く聞かれたときに根拠として示せます。
入社後に関わりたい仕事を聞く問い(Q109)では、希望を職種の名前まで具体的にするよう整理しています。その希望を、自分の経験で裏づけます。
希望と違う仕事から始まる場合への考えも示します。どの職種がどんな仕事をするのかも、直接聞ける機会に確かめておくと書きやすくなります。
調べたことを志望理由にする手順
ここからは手を動かします。調べた材料を並べ、志望理由の形にするところまでを進めます。志望している業界と会社の名前を書いた紙を用意してください。
業界の役割を一文で書く
志望する業界が、誰に何を届けているかを一文で書きます。書けないときは、業界の役割をまだ調べ切れていないので、ここから調べ始めます。
近い業界を一つ選んで、違いを書く
近い業界を一つ選び、比べる軸を一つ決めて、その軸での違いを書きます。その違いのうち、自分がこの業界を選ぶ理由になるものに印を付けます。
会社の事業の特徴と、他社との違いを書く
志望する会社の事業の特徴を書き、同じ業界の他社と比べて違うところを書き出します。理念や社員の印象ではなく、事業の仕組みの違いを書きます。
直接聞いたことを書き足す
説明会や社員への訪問で聞いたことを、誰から聞いたかと一緒に書き足します。まだ聞いていないなら、調べて分からなかったことを、次に聞くことの一覧にしておきます。
自分の経験とつなげる
印を付けた業界の違いと、会社の特徴のそれぞれについて、自分の経験のどこと重なるかを書きます。重なるところが見つかった材料が、志望理由の中心になります。
五つを書き終えたら、業界の理由と会社の理由を分けて読み返します。業界の理由が、ほかの業界にも当てはまる言葉になっていないかを確かめます。会社の理由が同じ業界の他社にも当てはまる言葉になっていないかも、同じように確かめます。
面接対策150問の悪い例(Q106)
御社の理念に共感しました。人を大切にする社風と、成長できる環境に魅力を感じています。
例(架空の型):調べたことと経験をつなげる形
説明会で、〇〇という仕組みについて伺いました。同じ業界の△△と比べると、□□の点が違うと理解しています。私は学生時代に◇◇に取り組み、その経験とこの仕組みが重なると考えて志望しています。
→ 直したほうは、どこで知ったか、何と比べたか、自分の経験のどこと重なるかが入っています。理念を読むことは無駄ではなく、その理念が事業のどこに表れているかまで調べると、この形の材料になります。
上の直した例は、話の骨組みだけを示すために作ったものです。実際の会社や出来事ではありません。〇〇や△△に、自分で調べたことを当てはめて使ってください。
書き上げる前に確かめること0 / 6 完了
よくある質問
志望する業界がまだ決まっていません。何から調べればいいですか?
気になっている業界を一つ選び、その業界が誰に何を届けているかを調べるところから始めます。役割が分かったら、近い業界を一つ選んで比べます。比べる作業をすると、自分が何を基準に業界を選んでいるかが見えてきます。
説明会や社員への訪問の機会が無いときは、どうすればいいですか?
直接聞いた情報が無くても、事業の仕組みや他社との違いは資料から調べられます。ただ、資料だけで書いた志望理由は、ほかの応募者と材料が重なりやすくなります。面接の逆質問の時間も、直接聞ける機会の一つとして使えます。
会社の弱みを面接で話して、印象が悪くなりませんか?
面接対策150問では、会社の課題は批判ではなく仮説として述べるよう整理しています。根拠と、自分が関わるならどうするかを添えます。弱みを指摘して終わるのではなく、自分の関わり方につなげる形で話します。
業界の志望理由と会社の志望理由は、同じ内容になってもいいですか?
重なるところがあっても構いませんが、聞かれていることは別です。業界の理由は近い業界との違いで、会社の理由は同じ業界の他社との違いで答えます。比べる相手が違うので、材料も分けて用意しておきます。
この記事の主張は、このサイトの面接対策150問にある問いの組み立てと悪い例で言い換えています。数字や体験談は使っていません。
根拠:面接対策150問 Q101・Q102・Q103・Q104・Q105(業界志望理由)/Q106・Q107・Q108・Q109・Q110(企業志望理由)志望理由のために調べたことは、面接の最後の逆質問でもそのまま使えます。調べても分からなかったことが、いちばん聞く価値のある質問になるからです。逆質問の作り方と、面接の冒頭の自己紹介の記事も、続けて読める記事として並べておきます。
【完全無料】
集めた材料が志望理由になっているかを、一緒に確かめる
志望理由は、調べた量が多くても、他社にも当てはまる言葉で書くと伝わりにくくなります。LINEの無料相談では、書き出した材料を一緒に見て、業界の理由と会社の理由がそれぞれの比べる相手で言えているかを確かめます。
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