「返事は〇日までにお願いします」。内定の電話を切ったあと、メモを見返しながら手が止まることはありませんか。
条件の説明は口頭で聞いただけで、書面はまだ届いていない。ほかに結果待ちの会社があり、いまの勤め先にも何も伝えていない。承諾するか、待ってもらうか、断るか、どの順に決めればいいのか迷いますよね。
先に、答えを書きます。その場では返事をせず、返事の期限と方法を聞いて控えます。承諾は、労働条件を書面で確認してからにしましょう。保留も辞退も、期限より前に直接伝えてください。在職中なら、退職を申し出るのは、承諾して入社日が決まってからです。
この記事は、転職先から内定の連絡を受けた人に向けて書きました。保留に応じてもらえるかや、辞退で問題が起きるかは、会社と事情で変わります。そのため、結果は約束しません。年収の交渉も扱わず、法律上の扱いは厚生労働省のQ&Aと法令で確認した範囲だけを書いています。資料と確認した日は、末尾の「参考にした資料」にまとめました。
この記事でわかること
内定の連絡を受けたときに聞くことと、承諾の前に労働条件を書面で確認する手順がわかるようになります。
保留をお願いするときは、理由と希望の日を一つずつ決めて、期限より前に連絡します。電話で伝え、同じ内容をメールでも送りましょう。
辞退は、辞退の意思・理由の一言・お礼の順に、短く伝えます。
在職中の人は、承諾して入社日が決まってから、いまの勤め先に退職を申し出てください。
内定の連絡を受けたら、その場で何を聞きますか?
聞くのは、次の5つです。内定の連絡が電話で来ても、その場では答えず、あとで答えるために必要なことを聞き取りましょう。聞いたことは、通話のあとすぐにメモに残してください。
連絡を受けたときに聞くこと0 / 5 完了
返事の期限に法律上の決まりがあるかは、確認した資料に書かれていませんでした。期限は、会社の案内で確認します。
例文は実在の人物・企業のものではありません。
例文:その場で答える返事
ありがとうございます。じゃあ、お受けします。
例文:あとで答える返事
連絡をいただき、ありがとうございます。内容を確かめて、〇月〇日の〇時までに返事をします。条件を書いた書面を、メールで送っていただけますか。
→ あとで答える例は、返事の日と、書面の依頼を、先に伝えています。
内定は、法律上どんな状態ですか?
法的な定義は、ありません。厚生労働省の「確かめよう労働条件」のQ&Aによると、採用内定の形はさまざまです。そのうえでQ&Aは、内定と内々定を次のように説明しています。
| 比べること | 内定 | 内々定 |
|---|---|---|
| 労働契約 | 法的な定義は無く、形も様々。厚生労働省のQ&Aは、一般的な形として「労働者と使用者との間で一定の始期及び採用内定通知書又は誓約書に記載されている採用内定取消事由が生じた場合は解約できるという解約権留保を付して労働契約を締結した状態」を挙げている | Q&Aは、「内定の段階に比べて多くの場合に労働契約を締結したとの認識には至っていないと考えられます」としている |
| 辞退したとき | 労働契約が成立していると認められるなら、一方的にやめると契約違反になるおそれがあり、理由によっては損害賠償の責任が生じることもある。ただし、働く側の意思に反して働くことを義務づけることはできない | 契約の破棄ではないとも考えられている。職業選択の自由(憲法第22条第1項)があるので、内々定の辞退が違法になることは、考えにくいとされている |
| どちらにあたるか | 受け取った書面と、会社の説明で確認する | 会社からの拘束の度合いが強ければ、内定と認められることもある。受け取った書面と、会社の説明で確認する |
こうした扱いがあるので、承諾の返事は、条件を確認してから出しましょう。新卒の内定の承諾と辞退は、学生向けの公的資料も使って、内定承諾と内定辞退の伝え方の記事にまとめています。この記事は、転職向けです。
承諾の前に、労働条件をどう確認しますか?
書面で受け取って、確認します。会社が書面を交付して示す労働条件は、法令で決められています(労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条)。厚生労働省のQ&Aが挙げている事項には、次のものがあります。
- 契約の期間
- 働く場所と仕事
- 始業と終業の時刻・休日など
- 賃金
- 退職
労働者が希望すれば、電子メールなどで送ってもらうこともできます。その場合は、記録を出力して書面にできる形であることが条件です。
書面の読み方と、確認する項目の一覧は、内定後に確かめる労働条件の記事にまとめています。返事の前にすることは、次の4つです。
書面を頼む連絡を受けたとき
電話で説明を聞いただけなら、労働条件を書いた書面かメールを送ってもらえるかを聞きましょう。
求人票と面接のメモを、書面の横に置く書面を受け取ったら
応募したときの求人票と、面接で聞いたことのメモを、書面の横に置いて読み比べます。食い違う箇所には、印を付けてください。
食い違いを聞く返事の前
印を付けた点を、連絡をくれた担当者に聞きます。たとえば、給与の内訳・勤務地と業務の変更の範囲・休日・入社日などです。答えが書面と違うときは、書面に反映してもらえるかも確認しましょう。
返事の日を決める聞いたあと
答えが返ってくる日を見込んで、返事の日を決めます。期限に間に合わないとわかったら、次の見出しの手順で保留をお願いしてください。
保留は、どうお願いしますか?
理由と希望の日を添えて、期限より前に頼みます。保留は、返事の期限を延ばしてほしいと頼むことです。
応じてもらえるかは、会社が決めます。頼む前に、期限までに答える場合の自分の答えも考えておきましょう。
理由を一つ決める頼む前
事実のとおりの理由を、一つ選びます。たとえば、条件の確認への回答を待っている場合や、ほかの選考の結果を待っている場合です。作った理由は伝えないでください。
希望の日を一つ決める頼む前
「いつまで待ってほしいか」を、日付で決めましょう。「少し」「しばらく」だけでは、いつまでかが決まりません。
期限より前に連絡する期限の前
期限に間に合わないとわかった時点で、連絡します。期限の当日まで待たないでください。
電話で伝え、メールで残す連絡のとき
電話で理由と希望の日を伝え、同じ内容をメールでも送ります。返事をもらった日付と、言われたことを控えておきましょう。
例文:日付の無い頼み方
ちょっと考える時間をください。
例文:理由と日付を添えた頼み方
内定の件で連絡しました。ほかに〇月〇日に結果が出る選考があり、返事を〇月〇日までお待ちいただくことは可能でしょうか。あわせて、書面の〇〇の点の回答もお願いします。
→ 理由と日付を添えた例には、理由・待ってほしい日付・確認したい点の三つが入っています。
メモ
面接では、他社の選考状況や、内定が出たら入社するかを聞かれることがあります。面接対策150問では、Q118(他社の選考状況)とQ119(入社の意思)が該当します。面接で答えた内容を書き出し、保留の理由とずれていないかを見比べてください。
応じてもらえない場合は、期限までに、承諾か辞退かを自分で決めます。決める材料は、書面の条件と、自分の譲れない条件の一覧です。
承諾と辞退は、どう伝えますか?
どちらも、期限より前に伝えます。連絡の方法は、会社の案内に従ってください。
承諾を伝える
承諾は、案内された方法で伝えます。承諾書や誓約書を求められたら、書かれた内容を読んでから署名しましょう。
Q&Aの説明にある内定の形では、取消事由が採用内定通知書か誓約書に書かれています。署名の前に、その欄も読んでおいてください。
例文:承諾を伝えるとき
内定のお申し出をお受けします。入社日は〇月〇日と理解しています。提出する書類と、その期限を教えてください。
辞退を伝える
厚生労働省のQ&Aは、内定者側からの辞退を「基本的に問題ない」としています。ただし、「あまりに信義則に反するような場合は、損害賠償を求められる可能性もあり得る」とも書いています。辞退を決めたら、伝え方が誠実かどうかも考えておきましょう。
連絡の方法と相手を確認する決めたあと
案内に連絡の方法が書かれていれば、それに従います。書かれていなければ、連絡をくれた担当者に電話で伝えましょう。
電話で伝える期限の前
辞退すること・理由の一言・お礼の順で、短く伝えます。理由は一言にとどめ、詳しいことは聞かれたら答えてください。考え直してほしいと言われたときは、迷いがなければ、辞退の意思を丁寧に繰り返します。
メールで残す電話のあと
電話で伝えた内容を、同じ日のうちにメールで送ります。送った日付と相手を控えておいてください。
例文:辞退の意思をぼかした言い方
いろいろ考えたのですが、ちょっと難しいかなと思っていまして……。
例文:辞退の意思を先に言い切った言い方
内定の件で、お返事のために連絡しました。検討の結果、辞退させていただくことにしました。選考で時間を取っていただいたことに、お礼を申し上げます。
→ 言い切った例は、最初の数文に、辞退の意思・理由の扱い・お礼が入っています。辞退の意思は、ぼかさずに言い切りましょう。
メモ
転職エージェントなどを通して応募した場合は、案内された連絡先にも伝えます。仕組みは、転職エージェントの仕組みと使い方の記事にまとめています。
在職中なら、退職はいつ申し出ますか?
承諾して、入社日が決まってからです。
「お世話になった職場には、早めに伝えたい」。そう考えて、承諾の前に上司へ話したくなりませんか。承諾の前に退職を申し出ると、条件を確認しきれないまま、いまの職を終える日が決まってしまいます。
転職の流れ全体は、在職中の転職活動の進め方の記事を参考にしてください。
注意
期間の定めのない雇用は、退職の申し入れから原則として2週間で終わります(民法第627条第1項)。厚生労働省のページは、就業規則などで決められた退職の手続きも確認するよう書いています。
返事の期限や保留の日を決めるときは、入社日から逆算します。引き継ぎの日数・残っている年次有給休暇・入社日を書き出して、退職を申し出る日を決めましょう。
申し出の方法と、退職のあとの手続きは、退職の伝え方と手続きの記事にまとめています。
返事を出す前に確かめること0 / 7 完了
編集部
返事の連絡をしたら、その日時と、話した相手と、言われたことを控えてください。行き違いが起きたときは、その控えを日付の順に読み返しましょう。
質問と答え
内定を承諾したあとで、辞退できますか?
働く側の意思に反して、働くことを義務づけることはできません。厚生労働省のQ&Aは、内定で契約が成立していると認められる場合も、そう説明しています。ただし、一方的にやめると契約違反になるおそれがあり、理由によっては損害賠償を求められることもあるとしています。個別の事情は、「確かめよう労働条件」のページにある個別相談の案内から相談できます。
保留をお願いするのは失礼ですか?
失礼かどうかは、公的な出典が無いので書きません。応じてもらえるかは、会社が決めることです。理由と希望の日を添えて、期限より前に頼みましょう。
返事の期限は、何日までと決まっていますか?
期限に法律上の決まりがあるかは、確認した資料に書かれていませんでした。期限は、会社の案内で確認してください。延ばしたいときは、期限より前に保留をお願いしましょう。
辞退は、メールだけで伝えてもいいですか?
会社の案内に連絡の方法が書かれていれば、それに従います。書かれていなければ、電話で伝えたうえで、同じ内容をメールでも送りましょう。
参考にした資料
内定・労働条件の明示・退職の決まりは、次の公的機関のページと法令で確認したものだけを書いています。それぞれ、確認した日を添えました。
厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「採用の内定・内々定について、取消や辞退する場合の注意点」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「採用時にはどのような労働条件が明示されるのでしょうか?」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
e-Gov法令検索「日本国憲法」(第22条)
https://laws.e-gov.go.jp/
e-Gov法令検索「民法」(第627条)
https://laws.e-gov.go.jp/
e-Gov法令検索「労働基準法」(第15条)
https://laws.e-gov.go.jp/
e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(第5条)
https://laws.e-gov.go.jp/
次に読む記事として、退職の申し出と手続き・内定後に確認する労働条件・新卒の内定の記事を紹介します。
この記事の内容を、自分の場合に当てはめて相談したいときは、ページの下の案内から申し込めます。