「年末調整のために、前の勤め先の源泉徴収票を出してください」。入社して間もなく、新しい勤め先の経理からこう案内される。前の勤め先から何が届いていたか、すぐには思い出せない。そんなことはありませんか。
何を、いつまでに出せばいいのか、迷いますよね。
先に、答えを書いておきます。年の途中で就職して年末まで勤める人は、年末調整の対象です。前の勤め先から給与を受けていたときは、その源泉徴収票を新しい勤め先に出します。出せないときや、年内に就職しないときは、確定申告で精算しましょう。
この記事は、転職した年に、新しい勤め先で年末調整を受ける人に向けて書きました。税額の計算や節税の方法は、人ごとの事情で変わるので書きません。制度の説明は、国税庁の資料で確認したことだけです。資料と確認した日は、末尾の「参考にした資料」にまとめました。
この記事でわかること
年の途中で就職して年末まで勤める人は、12月の年末調整の対象です。年の途中で退職して年内に就職しない人は、決められた場合を除いて対象になりません。
年の途中で退職した人の源泉徴収票は、退職の日以後1か月以内に交付される決まりです。届いていなければ、前の勤め先に交付の時期と方法を問い合わせましょう。
新しい勤め先には、扶養控除等申告書と前の勤め先の源泉徴収票を出します。申告書の期限は、最初の給与を受け取る日の前日までです。
前の分の金額を確認できないときや、年末調整を受けないときは、確定申告で精算します。納め過ぎのときは、翌年1月1日から5年間、還付申告ができます。
転職した年に、年末調整の対象になるのはどんな人ですか?
年末まで新しい勤め先で働く人は、対象です。年末調整は、毎月の給与から引かれた所得税の合計と、1年間に納めるべき額との差を精算する手続です。精算するのは勤め先です。
国税庁のタックスアンサー No.2665 は、対象になる人の条件を挙げています。その一つが、年末調整をする日までに、勤め先へ「扶養控除等(異動)申告書」を出していることです。
転職した年に当てはまるかは、年末まで新しい勤め先で働くかで分かれます。次の表にまとめました。
| その年の働き方 | 年末調整 | 精算の方法 |
|---|---|---|
| 年の中途で就職し、年末まで新しい勤め先で働く | 12月の年末調整の対象(給与の総額が2,000万円を超える人は除く) | 新しい勤め先で、前の勤め先の分も含めて年末調整をする |
| 年の中途で退職し、年内に次の勤め先へ入らない | 決められた場合を除いて、対象にならない | 確定申告で精算する |
| 前の勤め先の源泉徴収票で、金額を確認できない | 年末調整は行えない | 本人が確定申告で精算する |
年末まで新しい勤め先で働く場合
No.2665 は、12月に行う年末調整の対象として、二つの場合を挙げています。1年を通じて勤務している人と、年の中途で就職して年末まで勤務している人です。転職して新しい勤め先で年末まで働く人は、あとの形に当たります。
ただし、その年に支払うことが決まった給与の総額が2,000万円を超える人は、対象から除かれます。
年内に次の勤め先へ入らない場合
同じ No.2665 は、年の中途で退職した人は、決められた場合を除いて年末調整の対象にならない、としています。決められた場合は5つです。転職に関わりそうなのは、次の二つです。
- 12月に支給される給与を受けたあとに退職した人
- パートタイマーなどで、その年の給与の総額が136万円以下の人(退職後に他の勤め先から給与を受ける見込みがあるときは除く)
残る3つは、非居住者になった人・死亡で退職した人・著しい心身の障害で退職した人です。この記事では扱いません。
メモ
国税庁の令和8年分の年末調整Q&Aには、10月末に退職した人の例があります。再就職が決まらず、雇用保険の給付を受ける予定の人です。上の場合のどれにも当たらないので、在職中の給与について年末調整は行えない、と答えています。
前の勤め先の源泉徴収票は、いつまでに交付されますか?
退職の日以後1か月以内です。年の途中で退職した人には、前の勤め先から「給与所得の源泉徴収票」が交付されます。国税庁のタックスアンサー No.7411 によると、勤め先は、この期間内に交付しなければなりません。
交付の形は、書面だけではありません。同じページは、受け取る人の承諾などの要件のもとで、書面の代わりにデータで提供できるとしています。データで提供された場合でも、受け取る人が請求すれば、書面で交付されます。
届いていないときは、前の勤め先の経理や人事に、交付の時期と受け取り方を問い合わせましょう。
例文は実在の人物・企業のものではありません。
例文:届いていないときの問い合わせ
〇月〇日付で退職しました〇〇です。年末調整のために、給与所得の源泉徴収票が必要です。交付の時期と、郵送かデータかの受け取り方を教えてください。
メモ
退職のあとの手続きの全体は、退職の伝え方と手続きの記事にまとめています。離職票や健康保険、年金の期限も、そこで確認してください。
新しい勤め先には、何をどの順番で出しますか?
出すのは、二つの書類です。扶養控除等申告書と、前の勤め先の源泉徴収票を出します。国税庁の資料に書かれているのは、確認することと提出する書類までです。出す期限と出し方は、勤め先ごとに決まります。
源泉徴収票の内容を見る手元に届いたら
タックスアンサー No.2674 は、源泉徴収票などで三つを確認するとしています。前の勤め先で受けた給与の金額と、引かれた所得税の額、社会保険料の額です。この3つが書かれているかを見ましょう。
新しい勤め先の案内を読む入社後すぐ
源泉徴収票を出す期限と出し方(紙かデータか)は、新しい勤め先の案内で確認します。国税庁の資料には勤め先ごとの期限が書かれていないので、日付は書きません。
扶養控除等申告書を出す最初の給与の前日まで
国税庁の案内(令和8年分)によると、扶養控除等申告書は、その年の最初の給与を受け取る日の前日までに出します。扶養親族がいない人でも出してください。
前の勤め先の源泉徴収票を出す新しい勤め先の指定の期限まで
No.2674 は、前の勤め先などに扶養控除等申告書を出して受けた給与は、含めて年末調整をする必要があるとしています。含められるよう、前の勤め先の源泉徴収票を出します。
年末調整のあとの源泉徴収票を保管する翌年1月
年末調整を行った年の源泉徴収票は、No.7411 によると、翌年の1月31日までに交付されます。届いたら、前の勤め先の分と一緒に保管しましょう。
注意
扶養控除等申告書を出していない人の給与には、源泉徴収税額表の「乙」欄が当てはまります。出した場合よりも、高い税率です。
年末調整で引く基礎控除や扶養控除などは、就職した月数で割りません。No.2674 は、全額が認められるとしています。例として、学校を3月に卒業して4月から働き始めた人を挙げています。
前の分を出せないときや、年末調整を受けないときは、どうしますか?
確定申告で精算します。前の勤め先の源泉徴収票で金額を確認できないときは、年末調整は行えません。No.2674 は、この場合は本人が確定申告で所得税の精算を行うとしています。
年内にどこにも就職せず、年末調整を受けない場合も、確定申告で精算します。タックスアンサー No.2030 は、還付申告の例を挙げています。その一つが、年の途中で退職して年末調整を受けず、源泉徴収された税額が納め過ぎのときです。
ポイント
還付申告は、確定申告の期間とは関係なく、翌年の1月1日から5年間出せます。源泉徴収された税額が0の人は、申告しても還付される所得税がない、とも書かれています。
申告が必要な人の範囲を載せているのは、No.1900 です。給与所得者の大部分は年末調整で納税が済み、確定申告は要らないとされています。そのうえで、申告が必要な人として、次のような人を挙げています。
- 給与が2,000万円を超える人
- 給与を2か所以上から受けて、年末調整されなかった給与がある人
自分が当てはまるかは、税務署に問い合わせてください。申告は、次の順に進めます。
その年の源泉徴収票を集める翌年1月から
前の勤め先の分と、新しい勤め先の分を手元にそろえます。申告書に添える書類は、国税庁の「所得税及び復興特別所得税の手引き」にある「申告書に添付・提示する書類」で確認しましょう。
期間を確認する申告の前
タックスアンサー No.2020 によると、確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日です。還付申告は、上の期間とは別に出せます。
申告書を作って出す期間の中で
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の画面で金額を入れていくと、自宅で申告書を作って提出できます。提出先は、所轄の税務署です。
出す前に、何を確認しますか?
確認することは、6つです。ここまでの内容を、チェックリストにしました。チェックできない項目は、税務署か新しい勤め先の経理に問い合わせましょう。
年末調整の前に確かめること0 / 6 完了
編集部
源泉徴収票は、届いたその日に、封筒かファイルの名前に「何年分・どこの勤め先」と書いて保管してください。年末調整や確定申告で使うときに、どの年のどの勤め先の分かを見分けるためです。
転職全体の順番は、転職の進め方まとめの記事を参考にしてください。
質問と答え
前の勤め先の源泉徴収票が、退職してしばらくたっても届きません。
国税庁の No.7411 によると、年の途中で退職した人への源泉徴収票は、退職の日以後1か月以内に交付する決まりです。届いていないときは、前の勤め先の経理や人事に、交付の時期と方法を問い合わせましょう。金額を確認できないままだと年末調整は行えず、確定申告で精算します。
前の勤め先をやめてから、新しい勤め先に入るまで間が空きました。年末調整は受けられますか?
タックスアンサー No.2665 は、年の中途で就職して年末まで勤務する人を、12月の年末調整の対象としています。間が空いたかどうかは、対象の条件に書かれていません。前の勤め先から給与を受けていたときは、その分を含めて年末調整をするので、前の勤め先の源泉徴収票を新しい勤め先に出します。
年内に次の勤め先が決まらないまま、年を越しそうです。
No.2665 によると、年の中途で退職した人は、決められた場合を除いて年末調整の対象になりません。年末調整を受けない場合は、確定申告で精算します。No.2030 によると、年末調整を受けず税額が納め過ぎのときは、翌年1月1日から5年間、還付申告ができます。
前の勤め先から、源泉徴収票がデータで送られてきました。紙でも受け取れますか?
No.7411 によると、データでの提供は、受け取る人の承諾などの要件のもとで認められています。データで提供された場合でも、受け取る人から請求があるときは、書面で交付しなければならないとされています。
参考にした資料
制度・日程・法律についての説明は、次の公的機関のページで確認したものだけを書いています。それぞれ、確認した日を添えました。
国税庁 タックスアンサー No.2665「年末調整の対象となる人」
https://www.nta.go.jp/
国税庁 タックスアンサー No.2674「中途就職者の年末調整」
https://www.nta.go.jp/
国税庁 タックスアンサー No.7411「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等
https://www.nta.go.jp/
国税庁 タックスアンサー No.2020「確定申告」
https://www.nta.go.jp/
国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」
https://www.nta.go.jp/
国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
https://www.nta.go.jp/
国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和8年分)」
https://www.nta.go.jp/
国税庁「令和8年分 年末調整Q&A」
https://www.nta.go.jp/
退職のあとの手続きの全体と、転職全体の順番は、次の二つの記事にまとめています。
この記事の内容を、自分の場合に当てはめて相談したいときは、ページの下の案内から申し込めます。