「もう、会社に行きたくない」。入社して数か月、朝になるたびにそう考えていませんか。
求人や面接で聞いた話と、実際の仕事が違う気もする。試用期間だと何か違うのか、辞めると伝えてよいのか、どこに聞けばいいのかもわからない。一人で抱えるのは、つらいですよね。
先に、答えを書いておきます。辞める前に、労働条件の書面と実際の働き方を比較し、就業規則を読み、出来事を記録しましょう。困りごとは、公的な窓口で整理できます。期間の定めのない契約なら、退職の申し入れから原則2週間で雇用は終わります。
この記事は、入社1年目や試用期間中に辞めたいと考えている人に向けて書きました。辞めるべきか、続けるべきかは書きません。一人ひとりの状況は、外からはわからないからです。医療の判断もしません。決まりは、厚生労働省のページと e-Gov の法令で確認したことだけです。試用期間の扱いも、確認できた範囲で書いています。資料と確認した日は、末尾の「参考にした資料」にまとめました。
この記事でわかること
辞める前に、労働条件通知書と求人票と実際の働き方を比較する手順がわかるようになります。就業規則で読む項目と、出来事の記録の残し方もわかります。
困りごとは、公的な窓口で整理できます。職場の労働問題は総合労働相談コーナー、心の不調はこころの耳、というように、困りごとで窓口を選んでください。
期間の定めのない契約なら、法律では、退職の申し入れから原則2週間で雇用は終わります。根拠は民法第627条です。明示された条件が事実と違うときは、即時に契約を解除できる決まりもあります。
聞いていた話と違うとき、まず何を確認しますか?
まず確認するのは、書面の労働条件です。会社は、労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を示さなければなりません(労働基準法第15条)。
厚生労働省の「確かめよう労働条件」のQ&Aによると、次の事項は書面を交付して示すことになっています(昇給は除く)。
- 契約の期間
- 働く場所と仕事の内容
- 始業・終業の時刻や休日
- 賃金
- 退職に関する事項
書面の読み方は、内定後に確かめる労働条件の記事にまとめています。
求人票や募集の広告と、面接での説明が違っていたときは、どうすればいいのでしょうか。同じサイトのQ&Aは、まず、その違いがなぜ生じたのかを確認することが第一だとしています。会社の単純な事務上のミスの場合もあれば、そうでない場合もあるからです。
募集のときに示す事項には、試みの使用期間に関する事項も入っています。根拠は、職業安定法第5条の3と職業安定法施行規則第4条の2第3項です。求人票や募集のページで、試用期間の有無と長さも確認しましょう。ハローワークの求人なら、条件の違いをハローワークの窓口に申し出られる、とも書かれています。
書面を出す1つ目
労働条件通知書と雇用契約書を手元に出します。次の項目に、印をつけてください。
- 契約の期間
- 試用期間の有無と長さ
- 働く場所と仕事の内容
- 始業・終業の時刻と休日
- 賃金
- 退職に関する事項
求人票や募集のページと比較する2つ目
同じ項目を、求人票や募集のページと比較します。違う箇所には付箋を貼りましょう。募集のページが消えていたら、手元に保存した画面や紙を使います。
実際の働き方と比較する3つ目
実際の始業・終業の時刻、仕事の内容、賃金の支払いを、書面と突き合わせます。違う箇所には、日付を添えてください。
違う理由を、会社に聞く4つ目
どちらの条件が正しいのかを、人事の担当者か上司に聞きます。返事の内容と日付は、記録に残しましょう。
労働基準法第15条第2項は、示された労働条件が事実と違うときは、労働者は即時に労働契約を解除できる、と定めています。厚生労働省の退職のページも、同じ決まりを案内しています。働き始めたときや最初の給料のときに、実際の条件が約束と違っていれば、即時に退職できるとしています。
注意
どの違いがこの決まりに当たるかは、違いの内容で変わります。ここでは判断しません。「公的な相談先」の見出しで紹介する窓口に、書面を見せて確認してください。
就業規則では、退職の何を読みますか?
申し出の相手・時期・方法です。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使う会社に、就業規則を作って届け出ることを求めています。就業規則に書く事項には、退職に関する事項が入っています。解雇の事由も、同じ事項に含まれます。
会社は、就業規則を労働者に知らせることになっています(第106条)。方法は、見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付などです。どこで読めるかは、入社のときの説明で確認するか、人事の担当者に聞いてください。
厚生労働省の退職のページは、退職の手続きは就業規則などに定められているのが一般的だとしています。確認したうえで、決まりを守った手続きをとることが、トラブルを防ぐために大切だとも書いています。
メモ
第89条が作成と届出を求めているのは、常時10人以上の会社です。それより小さい会社の決まりは、労働条件通知書の「退職に関する事項」で確認します。
就業規則と労働条件通知書で読む項目0 / 6 完了
出来事は、どう記録しますか?
日付と場面をつけて記録します。記録は、あとから自分で状況を説明するための材料になります。窓口で話すときは、事実を順に説明する材料として使ってください。
注意
会社の機密にあたる資料は、持ち出さないでください。記録は、自分の手帳やメモに書きます。
手元の書面を集めるはじめに
労働条件通知書・雇用契約書・給与明細を、1か所にまとめます。就業規則は、会社が見せてよいとする範囲で、該当する箇所の場所と名前をメモしましょう。
出来事は、その日のうちに書く毎日
次の項目を書きます。
- 日付と時刻
- 場所
- 誰が、何を言い、何をしたか
- 自分は何と答えたか
同席した人がいれば、人数か役割を添えてください。
働いた時間と内容を書く毎日
始業と終業の時刻・休憩の取り方・した仕事・受けた指示を、毎日同じ形で書きます。書面の時刻と比較するときに使います。
事実と、自分の受け取りを分ける書くとき
言われたことや起きたことは事実の欄に、そのとき感じたことは別の欄に書きます。事実と気持ちを、同じ欄に混ぜないでください。
体の不調は、診断せずに書く書くとき
眠れない、食べられないなど、起きたことを日付とともに書きます。原因や病名は書きません。受診するかどうかは、医療機関に相談してください。
例文は実在の人物・企業のものではありません。
書き方の例:日付も場面もない記録
上司にきつく言われた。毎日つらい。
書き方の例:日付と場面がある記録
〇月〇日の午後、事務所で、上司から「〇〇」と言われた。同席は2名。私は「〇〇」と答えた。この日の終業は〇時。
→ 日付と場面がある記録には、日付・場所・言われた言葉・同席した人数・自分の答え・終業の時刻が入っています。
自分の記録には、日付と場面が入っていますか。入っていなければ、今日の分から日付と場面をつけて書きましょう。
公的な相談先は、どう選びますか?
困りごとで選びます。窓口は、辞めるかどうかを決める場所ではありません。事実を整理し、使える制度を知る場所として使いましょう。
| 困りごと | 窓口 | 相談の方法 |
|---|---|---|
| 職場の労働問題の全般 | 総合労働相談コーナー | 面談か電話。予約は要らず、無料 |
| 平日の夜間や土日・祝日に、労働基準関係の法令について聞きたい | 労働条件相談ほっとライン | 電話。無料で、匿名でも相談できる |
| つらさや心の不調が気になる | こころの耳 | 電話・SNS・メール。匿名で、無料 |
| ハローワークの求人の条件が、説明や実際と違う | ハローワーク | 窓口に申し出る |
総合労働相談コーナー:職場の労働問題の全般
厚生労働省の案内によると、総合労働相談コーナーは、労働問題のあらゆる分野を対象にしています。解雇、雇止め、賃金の引き下げ、いじめ・嫌がらせなどです。学生や就活生の相談も受けると書かれています。
専門の相談員が面談か電話で対応し、予約は要らず、利用は無料です。閉庁するのは、土日・祝日・年末年始です。法律に基づいて、助言・指導やあっせんの案内もしています。
労働基準法に違反する疑いがあるときは、労働基準監督署などの担当部署に取り次ぐとされています。所在地と連絡先は、同じページの都道府県ごとの一覧で確認してください。
労働条件相談ほっとライン:夜間と土日・祝日
厚生労働省の委託事業で、労働基準関係の法令に関する電話相談です。平日の夜間と、土日・祝日に、無料で利用できます。匿名でも相談できます。
同じページによると、この窓口から事業場に指導などをすることはできません。日中に動けないときは、最初の問い合わせ先として使ってください。
こころの耳:つらさや心の不調が気になるとき
厚生労働省の「こころの耳」は、働く人とその家族などを対象にした、メンタルヘルスのポータルサイトです。電話・SNS・メールの相談があり、匿名で無料で利用できます。
電話は、平日が17時から22時、土日が10時から16時です(祝日と年末年始を除く)。受付の終了時刻が早いので、詳しくは相談窓口のページで確認しましょう。
注意
電話相談のページには、対応できない内容も書かれています。病名の診断・治療方法の提示・いま受けている医療の是非の判断のような、医療行為にあたる内容です。法令違反やハラスメントに当たるかどうかの判断も、対象外です。
体の不調は、この窓口ではなく、医療機関に相談してください。
ハローワーク:求人票の条件が違うとき
ハローワークに出されていた求人の条件が、面接の説明や実際と違うときは、ハローワークの窓口に申し出ます。厚生労働省のQ&Aは、申し出を受けたハローワークが、会社に事実の確認や必要な指導を行う、と説明しています。求職者と就業者専用の電話窓口を載せているのも、同じQ&Aです。
退職の申し出には、どんな決まりがありますか?
契約の期間の定めで変わります。辞めるかどうかの判断は書きません。ここで書くのは、辞めると決めたときに知っておく決まりだけです。
| 契約や場面 | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 期間の定めのない契約 | どちらの側からも、いつでも解約を申し入れられる。申入れの日から2週間がたつと、雇用は終わる | 民法第627条第1項 |
| 期間の定めのある契約 | 期間の途中で辞めるには、やむを得ない事由が要る | 民法第628条 |
| 示された労働条件が事実と違う場合 | 労働者は、即時に労働契約を解除できる | 労働基準法第15条第2項 |
厚生労働省の退職のページは、会社が認めないと言っても、退職届などで申し入れれば、原則2週間後に契約は終わるとしています。就業規則でこの期間を大幅に伸ばしたり、会社の許可を条件にしたりしていても、その規定は無効とされる、とも書かれています。
期間を定めた契約については、同じページに注意があります。やむを得ない事由なく辞めて会社に損害を与えると、賠償の責任が生じるおそれがある、というものです。契約の期間が1年を超える場合には、例外の決まりがあるとも書かれています。
試用期間については、厚生労働省の裁判例のページが、入社時の契約に期間を設けた場合を説明しています。その趣旨が適性の評価・判断であれば、特段の事情がない限り、解約権を留保した試用期間と解されます。
注意
裁判例のページが書いているのは、おもに会社の側の解約です。試用期間中の人が辞めるときの決まりを、試用期間だけを取り上げて示した資料は、確認できませんでした。
そこで、辞める側の決まりは、契約に期間の定めがあるかどうかで考えます。試用期間が有期の契約か、期間の定めのない契約の最初の期間かは、労働条件通知書の書き方で確認してください。判断がつかないときは、総合労働相談コーナーに問い合わせましょう。
退職願や退職届の出し方と、出したあとの手続きは、退職の伝え方と手続きの記事にまとめています。
厚生労働省のページは、いったん出した退職の意思表示は、撤回が簡単には認められないとしています。十分に考えてから出すことが大切だとも書かれています。書面を出す前に、窓口で確認しておきましょう。
退職を申し出る前に確認すること0 / 7 完了
辞めると決めたあとの転職活動は、第二新卒の転職の進め方の記事を参考にしてください。次の面接で退職の理由を話すときの組み立ては、転職の面接の記事にまとめています。
編集部
書面と記録の比較は、1日に1項目ずつでかまいません。比較した結果をもとに窓口で話してから、続けるか辞めるかを決めてくださいね。
質問と答え
試用期間中でも、辞めたいと会社に伝えてよいですか?
試用期間だけを取り上げた辞める側の決まりは、公的な資料で確認できませんでした。厚生労働省の裁判例のページが説明しているのは、おもに会社の側の解約です。期間の定めのない契約なら、民法第627条で、申し入れから原則2週間で終わるとされています。自分の契約がどちらかは、労働条件通知書と就業規則で確認してください。判断がつかないときは、総合労働相談コーナーに問い合わせましょう。
聞いていた労働条件と違うとき、すぐに辞められますか?
即時に解除できる決まりがあります。労働基準法第15条第2項は、示された労働条件が事実と違う場合は、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。厚生労働省の退職のページも、同じ決まりを挙げています。働き始めたときや最初の給料のときに、実際の条件が約束と違う場合です。どの違いが当たるかは、窓口に書面を見せて確認してください。
会社が、辞めることを認めてくれません。
期間の定めのない契約なら、会社が認めなくても、原則2週間で終わります。厚生労働省の退職のページに、そう書かれています。退職の効力のような民事の問題は、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーに問い合わせてください。
眠れないほどつらいときは、どこに相談できますか?
厚生労働省の「こころの耳」に、電話・SNS・メールの相談窓口があります。匿名で無料で利用できます。病名の診断や治療方法の提示のような医療行為にあたる内容は、対象外です。体の不調は、医療機関に相談してください。
参考にした資料
制度・日程・法律についての説明は、次の公的機関のページで確認したものだけを書いています。それぞれ、確認した日を添えました。
厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「採用時にはどのような労働条件が明示されるのでしょうか?」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「求人票や求人広告に記載された条件が、実際の条件と違った場合の対処法」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例「試用期間」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
https://www.mhlw.go.jp/
厚生労働省「労働条件相談「ほっとライン」」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
厚生労働省「こころの耳」相談窓口
https://kokoro.mhlw.go.jp/
厚生労働省「こころの耳」働く人の電話相談
https://kokoro.mhlw.go.jp/
e-Gov法令検索「民法」(第627条・第628条)
https://laws.e-gov.go.jp/
e-Gov法令検索「職業安定法」(第5条の3)
https://laws.e-gov.go.jp/
e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」(第4条の2)
https://laws.e-gov.go.jp/
e-Gov法令検索「労働基準法」(第15条・第89条・第106条・第137条)
https://laws.e-gov.go.jp/
辞めると決めたあとに読む記事として、退職の手続きと転職活動の記事を紹介します。
この記事の内容を、自分の場合に当てはめて相談したいときは、ページの下の案内から申し込めます。